地域共生計画学とは何か

地域共生計画学とは何か

近代化以前の農村地域は集落を中心とした生活圏が地域の風土に合わせて成立していました.人間の衣食住のために必要な資源は,一部の必需品を除き生活圏の中でほぼ調達され,資源利用のルールも共同体により様々に決められていました. 近代化以降交通網の発達とともに人間の生活圏は拡大し,現在の農村の生活は都市や海外諸国との相互依存関係にあります.特に経済・流通のグローバル化が進んだ20世紀後半から,世界中の農村地域は資源とその利用のルールの急速な変化に直面しています.この変化の負の側面は環境問題や地域格差となって表れています.

地域計画の役割は,常に移ろいゆく地域の人と環境の関係を診断し,比較的長期的な視野に立って,資源利用のルール(制度)の改善を提案していくことです.20世紀後半には経済効率追求のあまり地域の特性を無視して規格化された開発が世界各地で推し進められた結果,地域の特性は失われ,地域間の競合が生まれました.これからはむしろ,地域の特性の違いをよく認識して,相補的な関係を築くことが求められます.共生という言葉にはそのような意味が込められています.

資源利用の制度を変えるには,計量可能な新しい価値観を導入してく必要があります.「持続可能性」という価値観の大切さは誰もが認めるところですが,現在その計量法はまだ確立されていません.時間スケール,空間スケール,主体を変えながら「持続可能性とは何か」を追究し,分かりやすい形で提示していくのも我々の大事な仕事です.